打席(バッタースボックス)からはみ出ている足に投球が当たっても死球となるのか?

公認野球規則 野球
公認野球規則

4月9日の試合。一死一塁の状況でバッタースボックスからはみ出している?足に投球が当たり、死球となったケースがあるらしい。この判定が正しいかどうかで意見が割れている。

追記:7月2日のヤクルト戦でも同様のプレイがあった模様。こちらははみ出した足に当たったわけではないが、足がはみ出しているのはしっかりと映像で捉えられている。

今回のプレイに適用されそうな公認野球規則の部分を見ていこう。

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死球(打者が走者となる場合)

5.05 打者が走者となる場合
(b) 打者は、次の場合走者となり、アウトにされるおそれなく、安全に一塁が与えられる。

(2) 打者が打とうとしなかった投球に触れた場合。
ただし、(A)バウンドしない投球が、ストライクゾーンで打者に触れたとき、(B)打者が投球を避けないでこれに触れたときは除かれる。

【規則説明】 打者が投球に触れたが一塁を許されなかった場合も、ボールデッドとなり、各走者は進塁できない。
【注3】 打者が投球を避けようとしたかどうかは、一に球審の判断によって決定されるものであって、投球の性質上避けることができなかったと球審が判断した場合には、避けようとした場合と同様に扱われる。

原文(Official Baseball Rules)
(2)  He is touched by a pitched ball which he is not attempting to hit unless
(A) The ball is in the strike zone when it touches the batter, or
(B) The batter makes no attempt to avoid being touched by the ball;

公認野球規則

5.06 走者
(c) ボールデッド
次の場合にはボールデッドとなり、走者は1個の進塁が許されるか、または帰塁する。その間に走者はアウトにされることはない。
(1) 投球が、正規に位置している打者の身体、または着衣に触れた場合──次塁に進むことが許された走者は進む。

原文(Official Baseball Rules)
(c) Dead Balls
(1)  A pitched ball touches a batter, or his clothing, while in his legal batting position; runners, if forced, advance;

公認野球規則

打者の死球(5.05)に関しては「投球がストライクだったかどうか」「投球を避けようとしたかどうか」の記載はあるものの、「バッタースボックスの内か外か」の記載はない。


一方でボールデッド(5.06)に関しては「正規に位置している打者」の文言がある。これは「バッタースボックス内」と捉えるのが妥当だろう。

…なぜ5.06にこの文言があるのかはわからない。正規に位置していようがいまいが打者に当たればボールデッドになるはずだ。「正規に位置している打者」に限定する必要がない。
もしや日本語訳がおかしいのでは?と思い原文を調べたが、そちらも5.06しか「正規に(his legal)~」のワードは出てきていない。

と、いうことで5.05と5.06どちらを採用するかを考えなければならないわけだ。優先順位は特に書かれていないが、5.06は打者の進塁に関する項目ではないので5.05を優先すべきなのだろう。イマイチ納得いかないが…。
続いてバッタースボックスをはみ出していた場合の規則を見ていこう。

打者の義務(バッタースボックスをはみ出していた場合のペナルティ1)

5.04 打者
(b) 打者の義務
(1) 打者は自分の打順がきたら、速やかにバッタースボックスに入って、打撃姿勢をとらなければならない。
(2) 打者は、投手がセットポジションをとるか、またはワインドアップを始めた場合には、バッタースボックスの外に出たり、打撃姿勢をやめることは許されない。
ペナルティ 打者が本項に違反した際、投手が投球すれば、球審はその投球によってボールまたはストライクを宣告する
(3) 打者が、バッタースボックス内で打撃姿勢をとろうとしなかった場合、球審はストライクを宣告する。この場合はボールデッドとなり、いずれの走者も進塁できない。

(5) 打者は、正規の打撃姿勢をとるためには、バッタースボックスの内にその両足を置くことが必要である。
【規則説明】 バッタースボックスのラインは、バッタースボックスの一部である。

ここでは「投手がセットポジションをとるか、またはワインドアップを始めた場合」=投球と表現する。

少しわかりづらいのが打撃姿勢の定義。
おそらく「投球が始まるまで」は(5)が適用される。ボックスから足が出ていれば打撃姿勢とみなされず、(3)で自動的にストライクとなる(要は遅延行為)。
「投球を始まった後」は(2)が適用されるのだろう。

というわけで投球が始まってからバッターボックスの外に出る行為は意外にも実質的なペナルティがない。通常通りストライク/ボールの判定がなされるだけだ。記載はないが、死球も通常通り判定されると考えるのが妥当だろう。

打者の反則行為(バッタースボックスをはみ出していた場合のペナルティ2)

6.03 打者の反則行為
(a) 打者の反則行為によるアウト
次の場合、打者は反則行為でアウトになる。

(1) 打者が片足または両足を完全にバッタースボックスの外に置いて打った場合。
【原注】 本項は、打者が打者席の外に出てバットにボールを当てた(フェアかファウルかを問わない)とき、アウトを宣告されることを述べている。

(3) 打者がバッタースボックスの外に出るか、あるいはなんらかの動作によって、本塁での捕手のプレイおよび捕手の守備または送球を妨害した場合。

いわゆる「反則打球」はバットにボールを当てた場合に適用されれるため、今回は無関係。
ただ、今回のプレイが(3)、すなわち守備妨害に該当する可能性はある。

守備妨害にならないのか?

打者と守備、どちらが優先か考えると以下のようになるはずだ。

打撃が完了するまで(バットに当たらないと断定できるまで?)→打者優先
打撃が完了してから→守備(捕手)優先

例えば肘出し(エルボーガードを付けている肘を出して投球に当てる行為)。見方によっては守備妨害と言えるが、実際に守備妨害を取られたところを見たことがない。捕手の守備(投球を捕球しようとする行為)を妨げているとの判断はされないわけだ。

足が出ているかいないかの違いは大きいが、今回のケースは肘出し同様守備妨害は適用されないのだろう。

結論

以上より、公認野球規則をそのまま当てはめれば死球になる可能性が高い。
ただ、公認野球規則はバッタースボックス外で投球が打者に触れることを想定していない気がする。
となると魔法の規則、8.01を適用する余地もあるのではないか。

8.01 審判員の資格と権限
(c) 審判員は、本規則に明確に規定されている事項に関しては、自己の裁量に基づいて、裁定を下す権能が与えられている。

公認野球規則

個人的には5.06の「正規に位置している打者」が本質だと思うので、規則改正でボール(死球にならない)になってほしい。

おまけ・足が出ていることを審判は確認できているのか?

ロッテのプレイはネットの議論を見ると足が浮いていた説もある。また、個人的にはギリギリラインに足がかかっているように見えなくもない。ヤクルトのプレイは足が出ているように見えるが、球審がちゃんとチェックできているかは不明だ。
今回の判定を判例にするのは危険だろう。

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