実例で学ぶ公認野球規則 9.07(盗塁と盗塁刺)

2012年、1イニング2盗塁刺(盗塁死)というプロ野球史上初の不名誉な記録が誕生した。

島プロ野球初の珍記録!1イニング2盗塁死

1度目の盗塁刺は牽制で飛び出してしまい、挟殺になるもセカンドが一塁送球した球が走者に当たり走者はアウトを免れた。2度目は普通にアウト。

1度目のプレイは送球ミスをしたセカンドに失策、走者には盗塁刺が記録された。公認野球記録9.07(h)が該当項目。

9.07 盗塁・盗塁刺
(h) 次に該当する走者が、アウトになるか、失策によってアウトを免れたと記録員が判断した場合にはその走者には盗塁刺を記録する。すなわち、
(1)盗塁を企てた走者 (2)塁を追い出されたために次塁へ進もうとした走者(元の塁に戻ろうとした後に次塁へ進もうとした走者も含む)(3)盗塁を企ててオーバースライドした走者がそれである。
【注2】塁を追い出された走者が、元の塁に戻ろうとしてアウトになるか、失策によってアウトを免れた場合には、その走者に盗塁刺を記録しない。

これと同じようなプレイが2022年にも発生した。

一・三塁で一塁走者がスタート。捕手が二塁送球するタイミングで三塁走者はスタート。セカンドは三塁走者の本塁生還は諦め、一塁送球するも走者に当たり走者はアウトを免れた。

当然最初のプレイと同じようにセカンドに失策、一塁走者に盗塁刺が記録される…かと思いきや、どちらも記録されず。三塁走者の本盗が認められた。

一塁走者に盗塁刺を記録しないのであれば三塁走者に盗塁を記録するのは正しい。公認野球規則9.07(c)が該当する。

(c)盗塁を企てるか塁を追い出された走者が挟撃されて、失策を記録されない守備側の不手際からアウトを免れて、次塁に進んだ場合には、その走者に盗塁が記録される。そのプレイ中、他の走者も進塁した場合には、その走者にも盗塁を記録する。
また、盗塁を企てた走者が挟撃され、失策を記録されない守備側の不手際からアウトを免れて、元の塁に帰ったプレイの間に、他の走者が進塁した場合、盗塁したその走者には盗塁を記録する

公認野球規則

ただし、一塁走者に盗塁刺を記録しないのであれば三塁走者に盗塁は記録されない。公認野球規則9.07(d)が該当する。

(d) 重盗、三重盗に際して、ある走者が奪おうとした塁に達する前か、あるいは、塁に触れた後オーバースライドして、野手の送球によってアウトにされたときは、どの走者にも盗塁は記録されない。
【注】 現実にアウトになった場合だけでなく、当然アウトになるはずの走者が失策によってアウトを免れたと記録員が判断した場合も同様、どの走者にも盗塁は記録されない。

9.07(c)の「失策を記録されない守備側の不手際」とは”走者との追いかけっこに負けた”とか”走者を深追いして普通の送球だけどセーフになった”等の状況を示し、送球ミスや捕球ミスは失策が記録されるため今回のプレイには該当しない。

2022年の記録は公式記録員の誤審といえるだろう。例によってNPBのご意見箱に投げておく。

コメント