「サヨナラ内野ゴロ」についての規則

日本の野球において、「サヨナラ内野ゴロ」はほとんど存在しない。詳しくは下記の引用部分に記載されているが、一打サヨナラの場面では本塁に送球するしか手段はなく、「野手選択」とするのはおかしいからだそうだ。

5-5の同点の場面です。オリックスの大城選手がショートへの高いバウンドとなるゴロを放ち、遊撃手の藤岡選手がホームへ送球するも、三塁走者がセーフとなり、サヨナラで勝敗が決まりました。この際、大城選手の打席結果は何と記録されたでしょうか。
結果は、ショートへの内野安打です。なぜでしょうか。

今まで私が書いてきたコラムであれば、ここでこの記録の根拠となる野球規則を紹介しているところですが、実は、これを安打とする内容は野球規則に記載がありません。
 しかしながら、サヨナラの場面ですから、三塁走者が得点すれば打者走者を一塁でアウトにしたところで勝敗が決まるので、打者としては三塁走者を得点させる打球さえ放てば良いという考え方に基づき、安打と記録します。

【記録員コラム】サヨナラの場面では内野ゴロが安打に!?https://npb.jp/news/detail/20190802_03.html

大会本部は、鹿屋中央―市和歌山戦でサヨナラ打となった延長12回の米沢の打撃成績を「二ゴロ」と発表した後、「二塁内野安打」に訂正した。
二塁手・山根が本塁に送球していてもセーフになると判断したため。同本部は「ルールブックに記載のないもので、安打と判断した。あの場面でのフォースアウトは意味のないもの」と説明した。

記録は二塁内野安打に 「二ゴロ」から訂正のワケ[ 2014年8月14日 05:30 ]https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/08/14/kiji/K20140814008740060.html

一方米国では「サヨナラ内野ゴロ(野手選択)」は普通に存在する。
例えばマゼイカ(マジーカ)が「サヨナラ内野ゴロ」を2回記録している。

最初の4試合で2度もサヨナラ勝ちのヒーローになったのに、MLB初安打はまだ。…マジか!?

2022はエンジェルスのスタッシーがサヨナラ内野ゴロを記録。こちらは動画あり。

「サヨナラ内野ゴロ」をサヨナラ安打にする考え方は公認野球規則に載っていないため日米で記録が変わってくるわけだが、この解釈は文章化されていないのだろうか?ネットで調べたところ、Wikipediaのサヨナラゲームのページには”このルールはプロ野球では明文化されており、明文化されていないアマチュア野球においても準用されている。”と記載されているが、出典はない。

ということで数少ない手持ちの蔵書から探したところ、2012年発売の「日本野球連盟の公式記録完全マニュアル」の[サヨナラ安打の解釈]に記載されていることがわかった。

公認野球規則のうえで明確な規定がない。プロ野球で適用している内規を準用したい。
①最終回の無死または一死で走者三塁の場合。
打者が通常の内野ゴロで内野手が本塁送球したがセーフとなって決勝点が入り試合終了した場合は、この得点がミスプレイの助けを借りたもの、と記録員が判断しない限り一塁で打者をアウトにできたかどうかにかかわりなく、打者に安打を記録する。(これは、10.06のd項と矛盾するが、サヨナラのケースで本塁送球意外に選択の余地がないため、野手選択を適用せず例外として安打を記録する)

②同様のケースで、内野ゴロを捕球した野手が一塁に送球し打者走者をアウトにする間に得点して試合終了となった場合。いったん三塁走者を牽制し、止まっているのを見て一塁送球した場合などはアウトに間の得点としてもよい。この場合は、三塁走者のスタートに注目し、スタートを切っていた場合は安打が妥当。

③一死一・三塁のケース。守備側の併殺崩れで決勝点が入った場合はそのまま記録する。

日本野球連盟の公式記録完全マニュアル 公式記録に関する規則について(参考資料)

ただし、実質的な改訂版である「野球 スコアのつけ方 完全マニュアル」ではプロ野球内規の部分は削除されており、「公認野球規則上でサヨナラ時の記録解釈について明確な規定はないが、記録部会では次のような取り扱いを推奨したい」に代わっている。

何故内規の記載を削除したかは不明だが、内規が削除されたとは考えづらい。内規を明文化しないようNPB側から指摘が入ったのだとしたら、内規やアグリーメントなどを隠したがるNPBの悪い癖が出ていると言える。

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