女性騎手の減量特典は、何故短期免許の騎手は適用されないのか?

競馬

2022年10月末から、イングランドのホーリー・ドイル女性騎手が短期免許で来日、JRAで騎乗している。自分は最初てっきり女性騎手減量◇(2㎏)が適用されるものだと思っていたが、出馬表を見ても減量されていない。「ドイル 女性 減量」あたりでググっても記事が出てこない。

制度設計時の記事で適用されない旨だけ確認できたが、どういった規則になっているのか気になったので調べてみた。

この減量特典は日本の女性騎手の騎乗機会を与えるもので、JRAと地方競馬の騎手にのみ適用される。短期免許で来日する外国人騎手は、すでに実績があることから適用されない。

女性騎手に永続的減量特典!JRA経営委で正式決定 2018.11.21 05:02

まず最初に『競馬番組一般事項』で負担重量について調べて見ると、「特に記載のない場合,競馬施行規程第71条第1号に定める馬齢重量とする」と記載されている。


『競馬施行規程(正式には日本中央競馬会競馬施行規程)』を確認すると、71条から負担重量について記載されており、減量については74条が該当する。

(騎手についての負担重量の減量)

第74条 特別競走及びハンデキャップにより負担重量を定める競走のいずれでもない競走に、次の各号に掲げる騎手が騎乗する場合には、競馬番組で定める重量を第71条の規定により定められた負担重量(前条の規定により定められたものを含む。以下この条において同じ。)から減ずる。

(1) 女性騎手(第44条第1項本文の免許試験に合格し騎手の免許を受けている女性及び第60条の規定により騎手の免許を受けている女性(規則第45条第6項で準用する規則第21条第1項本文の免許試験に合格し協会の騎手の免許を受けている者に限る。)をいう。)

日本中央競馬会競馬施行規程

条文が何個も出てきてクラクラするが、無条件で減量適用されるわけではないということはわかる。

まずは最初のカッコに記載されている44条及び60条を確認する。

(調教師又は騎手の免許)

第43条 調教師又は騎手の免許は、調教師にあっては、次条及び第45条の規定による調教師の免許試験に合格した者に対して行い、騎手にあっては、平地競走及び障害競走の競走の種類ごとに同条の規定による騎手の免許試験に合格した者に対して行う。

(調教師又は騎手の免許試験)

第44条 調教師又は騎手の免許試験は、毎年2回以内行うものとする。ただし、外国において馬の調教又は騎乗に関し免許を受けている者のために臨時の試験(以下「臨時試験」という。)を行うことがある。

(中央競馬指定交流競走に関する特例)

第60条 中央競馬指定交流競走のため、協会の調教師の免許を受けている者が本会の調教師の免許を受けようとする場合及び協会の騎手の免許を受けている者が本会の騎手の免許を受けようとする場合は、理事長の定めるところにより申請しなければならない。
2 前項の申請があった場合においては、第43条の規定にかかわらず、免許試験を免除して、協会の調教師の免許を受けている者に対し本会の調教師の免許を行い、又は協会の騎手の免許を受けている者に対し本会の騎手の免許を行う。
3 前項の調教師及び騎手の免許は、第50条第1項の規定にかかわらず、当該中央競馬指定交流競走に関してのみ効力を有する。

日本中央競馬会競馬施行規程

44条の一文目は通常の騎手試験。ただし~以降は短期免許についての記載。
60条は「中央競馬指定交流競走」に参戦する地方騎手についての項目。

「第44条第1項本文」の本文がどこかがポイントだが、法律用語的には↓のようにただし~の前部分が本文にあたるようだ。よって、短期免許(臨時試験)は非該当。

条文中に「ただし(但し)」で始まる文があるときは、その文を「ただし書(ただしがき)」と呼び、それに対する主文を「本文」と呼ぶ。 条文の読み方と、当サイトの凡例

『規則(競馬施行規則)』第45条及び規則第21条は上記70条とほぼ同内容。

(調教師又は騎手の免許試験)
第21条 調教師又は騎手の免許試験は、それぞれ競馬会が毎年、2回以内行うものとする。ただし、外国において馬の調教又は騎乗に関し免許を受けている者のために臨時に行うことができる。

(準用規定)
第45条
6 第13条から第26条までの規定は、地方競馬の馬主の登録並びに調教師及び騎手の免許について準用する。

競馬法施行規則

ということで規則上はJRA所属騎手及び地方競馬所属騎手のみ女性騎手減量が適用される。
外国騎手でもミルコ・デムーロやクリストフ・ルメールのように通常のJRA騎手免許を取得する女性騎手が現れれば、減量が適用されることになる…はず。

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