外野手(正確には外野領域の野手)が故意に落球をしても故意落球は適用されない。…というのが2021年までのルールだった。
正確には2022年現在も公認野球規則は変更されていない。ただ野球審判員マニュアルにて日本でも外野手に故意落球を適用されることが明言された。
5.09(a) 打者アウト
(12) 0アウトまたは1アウトで、走者一塁、一・二塁、一・三塁または一・二・三塁のとき、内野手がフェアの飛球またはライナーを故意に落とした場合。
ボールデッドとなって、走者の進塁は認められない。【注1】 本項は、容易に捕球できるはずの飛球またはライナーを、内野手が地面に触れる前に片手または両手で現実にボールに触れて、故意に落とした場合に適用される。
公認野球規則
【注2】 投手、捕手および外野手が、内野で守備した場合は、本項の内野手と同様に扱う。また、あらかじめ外野に位置していた内野手は除く。
外野手が、外野でダブルプレイを目的として故意に飛球やライナーを落とした場合、故意落球の規則が適用できるか? MLB UMPIRE MANUAL には、
野球審判員マニュアル第4版2020-2022修正一覧
「(故意落球の規則は) 外野手が内野近くまで来て、ダブルプレイを目的として故意に飛球やライナーを落とした場合にも適用される。」と書かれている。
2021年7月に開催された日本野球協議会オペレーション委員会審判部会において、日本においてもこの考え方を採用することが確認された。
何故野球規則は故意落球を内野手に限定しているのか?
公認野球規則の改正については「よくわかるルール教室(週ベ)」に記載されており、1970年代にあえて野手から内野手に変更している。
変更した理由はおそらく故意落球により進塁を阻止できないようにするためだろう。
例えば一死満塁で深い外野フライの場合、普通に捕球すれば犠牲フライ。故意に落球して故意落球が適用されるとボールデッドで得点は入らず二死満塁になってしまう。
アマチュア野球では有名な規則?
ネット上でこのプレイが有名になったのは旧セットポジション(現あなぐると)という個人サイトがきっかけだろう。
恐るべし亜細亜、外野手の「故意落球」で併殺プレイ-あなぐると
亜細亜大学は20年以上前から外野手の故意落球を”練習”していたというのだから、恐るべしという言葉がぴったりだ。
亜細亜大学は現代でもこのプレイを練習しており、2018年にひと悶着が起きた。故意落球による併殺が認められず、監督が抗議して話題となった。
亜大・生田勉監督が、頭脳プレーで完成させたかに見えた併殺が認められず、審判に猛抗議する一幕があった。
【東都】亜大・生田監督、猛抗議実らず惜敗「故意落球の練習を普段からやっている」
場面は0-0で迎えた6回裏、東洋大の攻撃。無死一、二塁から1番・竹原祐太中堅手が浅い中飛。これを亜大の赤嶺謙中堅手がわざと完全捕球せずに落とし、二塁手の安食幹太に転送した。走者は各塁にとどまっており、安食は二塁走者にタッチした後、二塁ベースを踏んだが、判定は「中飛は完全捕球」。アウトは1つしか認められなかった。
これを見た生田監督は、ベンチを飛び出して猛抗議。だが、判定は変わらず。試合後も「こっちはルールブックを勉強して、外野手には故意落球がないことを分かっている。その上で、故意落球しろ、という練習を普段からやっている。優勝がかかった試合で、あのジャッジは納得ができない」と怒り心頭だった。
審判も外野手に故意落球が適用できないことは理解しているのだろう。「完全捕球」扱いで併殺を回避した。
外野手の落球を利したプレイは大学野球に限った話ではないらしく、明徳義塾も2013年に併殺を取っている。
他にも何人もの監督が故意落球について語っている。アマチュア野球では(少なくとも強豪校では)周知されているのだろう。
13年夏の高知大会では、走者一、二塁の場面で明徳のセンターがフライを故意落球のようなかたちで落として併殺を取るというプレーがあった。「それも『汚い』言われた。そんなことない。ルールで認められてるでしょと~
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甲子園の監督会議で審判団の折る前で横浜の渡辺(元智、元監督)さんにどう思うか訊いたんよ。
『ピッチャーがバントのフライをワンバンで捕ってダブルプレー取ったらナイスプレーと言われるのに、外野手が落としたら汚いというのはない』と。その通りなんよ。
●インフィールドフライ
小倉ノート 64P
ルールを理解しておけば、逆にルールの盲点を突くようなプレーもできる。
ランナー一・二塁。二塁ベースの後方で、内外野の境目あたりのフライ。「インフィールドフライが宣告されないとき」は、セカンド(またはショート)が飛球を捕らなければ、うまくいけばダブルプレーを取れる。
0―0の二回、1死一、二塁のピンチを迎えた。ここで、福岡舞鶴の8番渡辺の浅い飛球が仲田の正面へ飛んだ。
落下点に入って悠々捕球――。と思った瞬間、グラブの土手に当たって、芝生にポトリ。だが、仲田は素早く拾って二塁上にいた遊撃手の久保田へ送球し、一塁走者を封殺。久保田が三塁へ転送し、落球を見てから三塁を目指した二塁走者をアウトにした。
仲田は「故意」の落球ではないことを強調したが、大濠では逆に、こういうケースで併殺を取られないための練習を普段からしているという。八木監督は「こっちが守りでやるというより、こういうことを相手にやられるかもしれない、ということです」。だから、監督は仲田がわざと落球したと思ったようで、「練習が頭の中に残っていたのか。機転の利いたプレー。私もびっくり」と目を丸くした。
エース三浦を救った落球併殺 福岡大大濠、機転のプレー
2021年、謎のブーム?
2021年に入ると人気ユーチューバーのトクサンTVや元NPB審判員も動画でネタにしており、さらに認知度が上がったのではないか。
今改正における問題点
・公認野球規則で明言していない
原典のOfficial Baseball Rulesも公認野球規則も今回の解釈については追記されていない。「ルールブックを読んでいてもわからない」というのは地味に大問題だろう。
・犠牲フライか?故意落球か?
審判員マニュアルには外野手の故意落球について「外野手が内野近くまで来て」と書かれているが、外野の定位置やや浅目くらいまでは併殺を狙えるのではないか。
そうなると、例えば以下のようなケースは審判の判断が非常に難しい。
一死満塁でセンターやや浅目のフライ。センターはフライを故意に落球。 故意落球を宣告しなければ【二塁送球(一塁走者アウト)→三塁送球(二塁走者挟殺)】or【二塁送球(二塁走者タッチアウト)→二塁触球(一塁走者アウト)】で併殺濃厚。 一方で三塁走者の走力やセンターの肩力より普通に捕球しても犠牲フライ濃厚だった。
審判は犠牲フライ(併殺濃厚)か故意落球(三塁走者生還できず)のどちらかを判断しないといけないわけだ。
また、守備側が最終回で2点以上リードしている状況なら勝敗に三塁走者は関係ない。点差も審判の判断に関わってくるかもしれない。
解決策?
ということで外野手に故意落球を適用したところで、完全に併殺狙いの故意落球を封じることはできないというのが個人的な考えだ。
何故このような問題が起きるかというと<守備側にペナルティがない><故意落球即ボールデッド>の2つが原因だろう。
例えばアドバンテージ的な考えで、故意落球をしてもボールインプレイ。プレイがひと段落した後にプレイの結果を活かすか故意落球を活かすか決めれば外野手の故意落球もなくなると思うのだが…。
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